選択性緘黙
(Selective Mutism)
家庭では元気に話せるのに、幼稚園や学校では声が出なくなる――
それが 選択性緘黙です。
DSM-5-TR では不安障害の一種と位置づけられ、3〜6 歳で気づかれることが多いですが、早期支援で社会場面での発話を少しずつ増やすことが可能です。
当院では、小児科医と公認心理師(言語聴覚士連携)がチームで伴走します。

医学的定義
(DSM-5-TR 要約)
特定の社会的場面で一貫して話さない (家庭など他の場面では話せる) |
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症状が1か月以上持続 (入園・入学後初月は除く) |
社会的・学業的機能に明らかな支障がある |
言語知識不足や発語障害では説明できない |
他の精神疾患 (自閉スペクトラム症など)によらない |
リスク因子と併存症
家族に不安障害や緘黙歴がある |
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社交不安、社会恐怖、広場恐怖の併存率が高い |
言語発達遅れ・聴覚過敏・ASD 傾向を伴うことも |
園・学校での急な注目、大勢の前での発表が悪化要因 |
評価・診断の流れ
医師初診: 発話状況・発達歴・家族歴を聴取 |
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スクリーニング: SM-Q、SCARED、CBCL で不安レベルを確認 |
言語聴覚評価: 言語理解・表出スキルの確認 |
観察: 園・学校場面での行動情報を共有 |
支援プログラム
段階的エクスポージャー: 家族 → 友人 → 先生 → クラス全体と発話場面を少しずつ広げる |
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Stimulus Fading: 慣れた相手との会話に第三者を徐々に同席 |
Contingency Management: 小さな発話成功に具体的フィードバック |
親面接法(PCIT-SM): 親が受容的姿勢で子を導く方法を学ぶ |
薬物療法: 重症例で SSRI(セルトラリン等)を併用 |
家庭でできるサポート
選択肢質問: 「りんご?バナナ?」など一語で答えられる聞き方 |
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時間を与える: 答えるまで 5〜10 秒待ち、急かさない |
成功を具体的にほめる: 聞こえる声量・目線が取れた瞬間をフィードバック |
リラクゼーション: 呼吸法・指先マッサージで不安を緩和 |
十分な睡眠: 寝る前のスマホオフで自律神経を整える |
学校への配慮例
出欠確認をうなずきやカードで代用 |
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発表はペア読みに変更し、徐々に人数を増やす |
授業中に即答を求めない環境づくり |
別室 → 教室後方 → 教室中央と段階登校 |
当院からのメッセージ
選択性緘黙は、勇気を少しずつ育てるプロセス。
ご家庭・園・学校が連携し、安心できる場面を広げれば発話の芽が伸びていきます。
気になるサインがあれば、お早めにご相談ください。
よくあるご質問
Q. 家では普通に話すのに病気?
A. 特定場面での強い不安が原因で、意図的な黙秘ではありません。
Q. いつ治りますか?
A. 早期介入ほど改善が早い傾向ですが、ペースは個人差があります。
Q. みよし市からも通えますか?
A. はい、みよし市から車で約20分、駐車場完備です。
Q. 薬だけで治せますか?
A. 薬は不安を下げる補助で、段階的エクスポージャーが主要治療です。
【この記事の監修・執筆】
アイキッズクリニック
院長 会津 研二(小児科専門医)
新生児・発達・思春期の診療に長年携わり、
多くのお子さんの成長と自立を見守ってきました。
ご家庭や集団生活でも穏やかに過ごせるよう、
アドバイスや治療をご提案しています。
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