感覚過敏
(Sensory Sensitivities)
掃除機の音で耳をふさぐ、服のタグが痛くて着替えを嫌がる――
こうした感覚過敏は、ASD や ADHD など神経発達症のお子さんに多くみられます。
当院では、小児科医と作業療法士(OT)が連携し、検査と環境調整・トレーニングをサポートしています。

医学的背景:感覚処理の 4 タイプ
(Dunn モデル)
タイプ | 特徴 |
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回避型(過敏) | 刺激に強く反応し避けようとする 例:音がするとすぐ耳をふさぐ |
感覚敏感型 | 刺激に気づきやすくストレスを感じる 例:蛍光灯のちらつきで頭痛 |
探求型(求刺激) | 強い刺激を求めて動き続ける 例:ジャンプや揺れを好む |
低登録型(鈍麻) | 刺激を認識しにくく反応が遅い 例:痛みに気づかない |
脳の視床‐感覚野ネットワークの調整機能差が関与すると考えられています。
年齢別によく見られるサイン
乳幼児: 抱っこで反り返る、砂場を嫌がる、哺乳瓶の乳首を拒否 |
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就学前: 掃除機・手をつなぐことを嫌がる、偏食・嗅覚過敏 |
小学生: チャイムや友達の声で頭痛、体育後にパニック、タグを切りたがる |
思春期: 蛍光灯・雑踏で疲労、制服素材が痛い、イヤホン依存 |
評価・診断の流れ
医師初診: 感覚史・生活影響を聴取 |
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感覚プロファイル検査: Sensory Profile 2/Short SP/成人版 AASP |
作業療法士評価: 感覚統合テスト(SIPT)、動作観察 |
併存症チェック: ASD, ADHD, 不安障害等 |
家庭・学校でできる5つの対策
環境調整:イヤーマフ、調光ライト、タグを外す、柔らかい素材 |
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センサリーダイエット: 1日に数回、深圧・ブランコ・トランポリンで刺激を“栄養補給” |
予告と視覚支援: 予定をタイマー・写真で見える化 |
呼吸・筋弛緩: |
4-7-8呼吸やストレッチで自律神経を整える |
選択肢提示:「タグ付きシャツとタグなしシャツどちら?」と自己決定を尊重 |
専門的アプローチ
感覚統合療法: OT による遊びベースの刺激調整 |
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認知行動療法(CBT): 刺激への認知再構築と不安マネジメント |
薬物療法: 二次的な不安・興奮が強い場合にSSRIやα2A作動薬を併用 |
学校への合理的配慮例
イヤーマフ・サングラスの持ち込み許可 |
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教室の前方/後方など座席選択 |
体育や音楽の部分参加と休息時間の設定 |
制服素材の変更や着替えスペース提供 |
当院からのメッセージ
感覚過敏は“感じ方の個性”。
強みを活かしつつ困りごとを環境で補えば、安心して学び・遊べます。気になるサインがあればお気軽にご相談ください。
よくあるご質問
Q. 慣れさせるために我慢させたほうがいい?
A. 強い刺激の暴露はパニックや不信感を高めるため、段階的・選択式が基本です。
Q. 感覚統合療法は効果がありますか?
A. OT 主導の個別プログラムで日常機能の向上が報告されていますが、継続と家庭連携が鍵です。
Q. みよし市在住ですが受診できますか?
A. はい、みよし市から車で約20分、駐車場完備です。
Q. 大人になっても治らない?
A. 感覚の敏感さは続くことがありますが、対処スキルと環境調整で生活しやすくなります。
【この記事の監修・執筆】
アイキッズクリニック
院長 会津 研二(小児科専門医)
新生児・発達・思春期の診療に長年携わり、
多くのお子さんの成長と自立を見守ってきました。
ご家庭や集団生活でも穏やかに過ごせるよう、
アドバイスや治療をご提案しています。
お気軽にご相談ください。